物流業務におけるIT活用とは?メリットや活用事例も含めてご紹介!

近年、物流業界では人手不足やEC市場の拡大、配送コストの上昇などを背景に、物流業務の効率化がこれまで以上に重要になっています。

そこで注目されているのが、物流にITを活用する取り組みです。物流ITを導入することで、受注管理や在庫管理、ピッキング、検品、出荷、配送まで幅広い物流業務を効率化できます。

一方で、「物流ITにはどのようなシステムがあるのか」「自社の物流にITを導入するとどんな効果があるのか」と疑問を持つ方も多いでしょう。本記事では、物流のIT化が求められる背景やメリット・デメリット、物流で活用されているITシステム、導入事例、選び方までわかりやすく解説します。

この記事を監修した人

藤井 玲

2002年に楽天市場へ出店したことをきっかけに、EC支援サービスの提供をスタート。
累計20年200社以上のECサイト制作、運営支援経験を持つ。
現在は、Shopify Plus Partnerとして、ECサイトの新規出店支援はもちろん、売上改善や業務改善などのコンサルティングを手掛けている。

物流のIT化とは?物流DXとの違いもわかりやすく解説

物流のIT化とは、これまで紙やExcel、電話、FAX、人の経験などに頼っていた物流業務にITシステムやデジタル技術を取り入れ、業務を効率化・可視化することです。

たとえば、WMSによる在庫管理、OMSによる受注管理、TMSによる配送管理、バーコードやRFIDを使った検品などが挙げられます。

一方、物流DXは単に既存業務をデジタル化するだけではなく、ITによって物流の仕組みそのものを変革する考え方です。

つまり、紙の在庫表をWMSに置き換えるのが「IT化」だとすれば、蓄積された在庫・受注・配送データを分析し、倉庫配置や配送方法、在庫戦略まで見直すのが「物流DX」といえます。

物流DXを進めるためにも、まずは物流ITによってデータを蓄積・活用できる環境を整えることが重要です。

物流業界でIT化が求められている背景と課題

近年、物流業界では人手不足やEC市場の拡大、配送費・人件費などの物流コスト上昇によって、従来のように人の経験や手作業だけで業務を回し続けることが難しくなっています。

また、Excelや紙による管理が残っていたり、受注・倉庫・配送で使用するシステムが分断されていたりすると、物流量が増えた際に業務負担が急激に大きくなるケースもあります。

物流のIT化を考えるためには、まず「なぜ今、物流業界でITが必要とされているのか」を理解することが重要です。ここからは、物流業界が抱える代表的な課題とIT化が求められる背景を詳しく見ていきましょう。

人手不足によって人に依存した物流オペレーションの維持が難しくなっている

物流業界では、倉庫スタッフやドライバーなどの人材確保が大きな課題となっています。

さらに、ベテラン担当者の経験や勘によって「どの商品をどこに置くか」「どの順番で出荷するか」「どの車両にどの荷物を積むか」といった判断を行っている現場も少なくありません。

しかし、人手不足が進む中では、特定の担当者しか業務を進められない状態を維持することが難しくなります。

そこで物流ITを活用し、作業手順や在庫情報、配送計画などをシステム上で共有することで、経験の浅いスタッフでも一定品質で業務を進められる環境をつくることが重要です。

物流ITは単なる省人化だけでなく、人の頭の中にあるノウハウを「会社の仕組み」として残すためにも活用できます。

EC市場の拡大によって多品種・小口・多頻度の出荷が増えている

ECでは、一度に大量の商品を同じ店舗へ配送する従来型の物流とは異なり、多数の商品を一人ひとりの購入者へ小口で発送する必要があります。

さらに、SKU数の増加や当日・翌日配送への対応、ギフト包装、同梱物の指定など、物流現場に求められる作業も複雑化しています。

出荷件数が少ないうちは人の目やExcelでも対応できますが、注文数が増えるほど確認作業や入力作業が増え、誤出荷や在庫差異が発生するリスクも高まります。

OMSやWMSなどの物流ITを活用すれば、注文情報から出荷指示、在庫引当、ピッキングまでをデータで連携できます。

EC物流では、人を増やして処理するのではなく「注文数が増えても対応できる仕組み」をつくることが重要です。

物流コストの上昇によって「売上」だけでなく「1件あたりの物流コスト」の管理が重要になっている

物流費を考える際、運賃や倉庫賃料だけに注目しがちですが、実際には入荷、棚入れ、保管、ピッキング、検品、梱包、出荷など、さまざまな工程でコストが発生しています。

そのため、売上が増えていても出荷作業に必要な人員や配送費がそれ以上に増えれば、利益が残らないケースもあります。

そこで重要になるのが、「1件の注文を出荷するために何円かかっているか」という視点です。

物流ITを活用すると、作業時間や出荷件数、在庫量、配送費などのデータを蓄積しやすくなります。

売上だけを見るのではなく、1注文あたりの物流コストや1商品あたりの作業時間まで可視化することで、どの工程を改善すれば利益率を高められるのか判断しやすくなります。

Excel・紙・電話による管理では物流量の増加に対応しにくくなっている

物流量が少ない企業では、Excelによる在庫表や紙のピッキングリスト、電話・メールによる配送手配でも業務を進められる場合があります。

しかし、取扱商品や注文数、倉庫拠点が増えてくると、同じ情報を複数のファイルへ入力したり、担当者同士で確認したりする作業が増えていきます。

特にExcelでは、誰かが更新している間に別の担当者が古い情報を参照したり、入力ミスによって実在庫とデータ上の在庫がずれたりする可能性があります。

物流ITを導入すれば、受注・在庫・出荷などの情報をシステム上で共有でき、担当者ごとに異なる情報を持つ状態を減らせます。

物流量が増えるほど、「人が情報を確認する仕組み」から「システム上で情報が更新される仕組み」への転換が重要になります。

倉庫・受注・配送でシステムが分断され物流データを経営判断に活用できていない

物流ITを導入している企業でも、受注はOMS、倉庫はWMS、配送は別のシステムといった形で、それぞれが独立して運用されているケースがあります。

個々の業務は効率化されていても、データが分断されていると「注文が入ってから出荷されるまで何時間かかっているか」「どの商品が物流コストを押し上げているか」といった横断的な分析が難しくなります。

物流ITで重要なのは、システムを導入することだけではありません。

受注・在庫・出荷・配送などのデータを連携させ、物流全体を一つの流れとして把握できる状態をつくることが重要です。

物流データを横断的に分析できれば、日々の作業改善だけでなく、在庫配置や物流拠点、販売戦略など経営レベルの意思決定にも活用できます。

物流にITを導入するメリット

物流ITを導入することで、単に作業をデジタル化できるだけでなく、物流現場の「見える化」「標準化」「自動化」を進めることができます。

入荷から配送までの状況をリアルタイムで確認できるようになれば、問い合わせ対応や在庫確認の負担を減らせます。また、作業をシステム化することで、ベテランスタッフの経験に依存していた業務を誰でも行いやすくすることも可能です。

さらに、物流データを蓄積すれば、人員配置や物流コスト、在庫量などを数字に基づいて改善できるようになります。ここでは物流にITを導入する代表的なメリットを紹介します。

入荷・在庫・出荷・配送状況をリアルタイムで把握できる

物流ITを導入する大きなメリットの一つが、物流の状況をリアルタイムに把握しやすくなることです。

紙やExcelで管理している場合、実際の作業とデータ更新の間に時間差が生じ、「システムでは在庫があるのに倉庫にはない」といった状況が起こることがあります。

WMSやTMSなどを活用すれば、入荷・棚入れ・ピッキング・出荷などの作業に合わせてデータを更新できます。

その結果、「現在どの商品が何個あるのか」「どの注文まで出荷が完了しているのか」「配送中の商品はどこにあるのか」を確認しやすくなります。

問い合わせのたびに倉庫へ電話する必要も減るため、EC運営やカスタマーサポートの効率化にもつながります。

ピッキングや検品などの物流作業を標準化して属人化を防げる

物流現場では、商品の保管場所や効率的なピッキング順などをベテランスタッフが記憶しており、その知識に頼って業務が行われていることがあります。

この状態では、担当者が休んだり退職したりすると、生産性が大きく低下する可能性があります。

WMSやハンディターミナルを活用すれば、商品の保管場所やピッキングする商品、数量などを画面上で指示できます。

作業者が自分で判断する場面を減らせるため、経験年数に左右されにくい物流オペレーションを構築できます。

物流ITは人を減らすだけではなく、誰でも一定の品質で作業できる環境をつくるためにも有効です。

誤出荷・在庫差異・入力ミスなどのヒューマンエラーを減らせる

物流では、商品番号の見間違い、数量の数え間違い、送り先の入力間違いなど、さまざまなヒューマンエラーが発生します。

誤出荷が発生すれば、商品の再発送費用や回収費用がかかるだけでなく、顧客からの信頼低下にもつながります。

バーコードやQRコード、RFIDなどを物流ITと組み合わせれば、「商品」「数量」「注文情報」が一致しているかシステム上で確認できます。

人が目視だけで確認する工程を減らし、間違っている場合にアラートを表示する仕組みをつくることで、ミスを出荷前に発見しやすくなります。

在庫の入出庫も作業と同時に記録すれば、実在庫とシステム在庫の差異を抑え、棚卸し作業の負担軽減にもつながります。

必要な人員数や作業時間を予測して物流現場の配置を最適化できる

物流現場では、曜日や時間帯、セール、季節イベントなどによって出荷量が大きく変動します。

経験だけでシフトを組んでいると、注文が少ない日にスタッフが余ったり、繁忙日に人員が不足して出荷が遅れたりする可能性があります。

物流ITで過去の受注件数や出荷件数、作業時間などを蓄積すれば、どの程度の物量に何人必要だったのかを分析できます。

たとえば、1人が1時間に処理できる出荷件数を算出しておけば、翌日の受注件数から必要な人員を逆算できます。

「忙しそうだから人を増やす」のではなく、物流データを基準に人員配置を行えるため、人件費の最適化と出荷品質の維持を両立しやすくなります。

在庫・作業時間・配送コストを数値化して物流改善の優先順位を決められる

物流改善が進まない原因の一つに、「どこに問題があるのかわからない」という点があります。

現場から「ピッキングが大変」「梱包に時間がかかる」といった声が出ても、感覚だけではどの課題から改善すべきか判断することは困難です。

物流ITを使えば、商品別の在庫回転率、工程別の作業時間、1件あたりの配送費などを数値として把握できます。

たとえば、ピッキングに作業時間の50%を使っているのであれば、梱包設備よりも保管レイアウトやピッキング方法を見直した方が大きな改善効果を期待できます。

「なんとなく大変」を数字に置き換えることで、改善効果の大きい業務から優先して取り組めるようになります。

出荷量が増えても人員を同じ割合で増やさない物流体制をつくれる

物流業務をすべて人の作業で処理していると、出荷件数が2倍になれば必要なスタッフもほぼ2倍になるなど、事業成長に比例して物流コストが増えやすくなります。

特にECでは、キャンペーンやSNSなどをきっかけに短期間で注文数が急増することもあります。

受注処理や在庫引当、出荷指示などをITで自動化しておけば、注文数が増えた際も事務作業を同じ割合で増やす必要がありません。

さらにWMSや物流ロボットなどを組み合わせれば、倉庫内作業の生産性も高められます。

物流ITの目的は単に現在の人件費を削減することではなく、売上や出荷件数が増えても物流コストが急激に膨らまない「拡張しやすい物流体制」をつくることにもあります。

物流にITを導入するデメリット・注意点

物流ITには多くのメリットがありますが、システムを導入すれば必ず物流業務が改善されるわけではありません。

システム料金だけを見て導入した結果、端末やシステム連携に想定以上の費用がかかったり、現場の作業方法と合わず逆に手間が増えたりすることもあります。また、すでに利用しているECシステムや基幹システムと連携できなければ、二重入力が残ってしまう可能性もあります。

物流ITで失敗しないためには、導入前に費用・現場運用・システム連携・例外処理まで確認することが重要です。ここからは主なデメリットと注意点を解説します。

システム導入費だけでなく端末・連携・教育などの費用も発生する

物流ITを導入する際は、システムの月額料金や初期費用だけで予算を判断しないことが重要です。

たとえばWMSを導入する場合でも、ハンディターミナルやプリンター、バーコードラベル、無線LAN環境などが必要になることがあります。

また、既存のECカートやOMS、基幹システムと連携するために追加開発費が発生するケースもあります。

さらに見落とされやすいのが、マニュアル作成やスタッフ研修、導入初期の生産性低下といった社内コストです。

物流ITの費用は、システム料金だけでなく「機器・連携・設定・教育・運用」を含めた総額で比較しましょう。

現場に合わないシステムを導入すると逆に作業工程が増えることがある

高機能な物流ITを導入すれば、必ず業務が効率化されるとは限りません。

たとえば、これまで1回の作業で完了していた工程で複数回の画面入力が必要になったり、現場で不要な確認項目まで入力しなければならなくなったりすると、かえって作業時間が増える可能性があります。

特に注意したいのが、管理部門だけでシステムを選定してしまうケースです。

資料上では便利に見える機能でも、実際に倉庫で作業するスタッフにとって使いやすいとは限りません。

可能であればデモやテスト運用を実施し、現場スタッフにも操作してもらったうえで選定しましょう。

既存のEC・基幹・受注システムと連携できず二重入力が残る場合がある

物流ITを選ぶ際に必ず確認したいのが、現在利用しているシステムとの連携です。

たとえばWMSを導入して倉庫作業を効率化できても、ECカートやOMSから注文情報を自動で取り込めなければ、CSVを毎回ダウンロード・アップロードする作業が残る可能性があります。

さらに、異なるシステムへ同じ商品情報や出荷情報を入力する必要があれば、入力ミスや更新漏れの原因にもなります。

そのため、システム単体の機能だけではなく、「受注→在庫→出荷→配送」のデータがどのようにつながるかを確認することが重要です。

例外対応の多い物流ではすべてをシステム化すると運用が複雑になる

物流では、すべての注文が同じ条件で処理されるとは限りません。

たとえばギフト包装、熨斗、セット商品、予約商品、同梱物、特殊な配送方法など、顧客や商品によって個別対応が必要になるケースがあります。

こうした例外業務まで無理に完全自動化しようとすると、非常に複雑な条件設定やシステム開発が必要になり、かえって運用しにくくなることがあります。

「すべてを自動化する」のではなく、通常注文はIT、特殊な注文だけ人が確認する運用も有効です。

たとえば通常注文の90%を自動処理し、特殊な条件に該当する10%だけ担当者が確認する仕組みにすれば、柔軟性を残しながら大部分の業務を効率化できます。

IT導入そのものが目的になると物流コストが下がらないことがある

物流ITの導入でよくある失敗が、「WMSを入れる」「AIを使う」といったシステム導入自体が目的になってしまうことです。

本来、物流ITは「ピッキング時間を30%削減する」「誤出荷を減らす」「在庫精度を高める」など、具体的な物流課題を解決するための手段です。

課題が整理されていない状態で導入すると、システムは使われていても物流コストがほとんど変わらないということもあります。

「ITを入れたか」ではなく、「物流の数字がどう変わったか」で成果を判断することが重要です。

物流で活用されている主なITシステム・技術

物流のIT化では、業務内容や解決したい課題によって利用するシステムが異なります。

たとえば倉庫内の在庫・入出荷を管理するならWMS、ECの受注処理を効率化するならOMS、配送計画や配車を改善するならTMSなどが代表的です。さらに近年では、RFIDやIoT、AI需要予測、物流ロボットなど、物流現場そのものを自動化・高度化する技術も活用されています。

重要なのは、「最新のITだから導入する」のではなく、自社が抱える物流課題に合った技術を選ぶことです。ここでは代表的な物流ITと実際のサービス例を紹介します。

WMS(倉庫管理システム)|ロジザードZERO・クラウドトーマス・Air Logi

WMS(Warehouse Management System)は、倉庫への入荷から保管、在庫、ピッキング、検品、出荷までを管理するシステムです。

代表的なサービスには「ロジザードZERO」「クラウドトーマス」「Air Logi」などがあります。

Excelによる在庫管理とは異なり、「どの商品が」「どのロケーションに」「何個保管されているか」を倉庫作業と連動して管理できることが特徴です。

バーコードやハンディターミナルなどと組み合わせれば、入出庫時に商品を読み取って在庫情報を更新したり、ピッキングする棚を作業者へ指示したりすることもできます。

SKU数や出荷件数が増え、在庫差異・誤出荷・ピッキング効率に課題を感じている企業と相性のよい物流ITです。

OMS(受注管理システム)|LOGILESS・ネクストエンジン・CROSS MALL

OMS(Order Management System)は、ECモールや自社ECサイトなどから入る注文情報をまとめて管理するシステムです。

代表的なサービスには「LOGILESS」「ネクストエンジン」「CROSS MALL」などがあります。

複数の販売チャネルを運営している場合、それぞれの管理画面へログインして注文を確認すると、受注件数が増えるほど作業負担も大きくなります。

OMSを活用すれば、各ショップから注文情報を取り込み、受注ステータスの管理や在庫連携、出荷指示などを一元化できます。

一定条件の注文を自動で処理する仕組みを構築できるサービスもあり、受注担当者がすべての注文を一件ずつ確認する作業を減らせます。

TMS・配送管理システム|MOVO Vista・Loogia・LYNA 自動配車クラウド

TMS(Transportation Management System)は、配送計画や配車、車両、運行状況など輸配送に関わる情報を管理・最適化するシステムです。

関連サービスとして「MOVO Vista」「Loogia」「LYNA 自動配車クラウド」などがあります。

配送先が多い企業では、どの車両にどの荷物を積み、どの順番で配送するかを決めるだけでも大きな負担になります。

配送管理システムや配車最適化サービスを活用すれば、配送先や荷量、車両条件などのデータをもとに配送計画の作成を支援できます。

配車担当者の経験に依存した業務を減らし、配送距離や車両稼働率などを改善したい企業で活用されています。

バース予約・受付システム|MOVO Berth・トラック簿

バース予約・受付システムは、物流センターや工場などへ荷物を運ぶトラックの到着時間や荷積み・荷卸しの予定を管理するための物流ITです。

代表的なサービスとして「MOVO Berth」や「トラック簿」などがあります。

入荷や出荷の車両が特定の時間帯に集中すると、トラックが施設の外で長時間待機したり、倉庫側の作業員が対応できず荷役開始が遅れたりします。

バース予約システムを利用すれば、時間帯ごとの車両数を把握し、トラックの待機時間や荷役作業の集中を抑えやすくなります。

倉庫ロボット・自動搬送|Amazon Robotics・AutoStore・AGV・AMR

倉庫では、人が商品を探して歩き回る作業を減らすため、さまざまな物流ロボットや自動搬送設備が活用されています。

代表的な仕組みとしてAmazon RoboticsやAutoStoreがあり、AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)なども物流現場で利用されています。

従来の倉庫では、ピッキング担当者が棚まで移動する時間が作業時間の大きな割合を占める場合があります。

ロボットを活用し、「人が商品を探しに行く」から「商品が人のところへ来る」物流へ変えることで、歩行時間を大幅に減らせる可能性があります。

ロボット単体で考えるのではなく、WMSや倉庫レイアウトを含めた全体設計が重要です。

RFID・IoT|商品や荷物の位置・状態をリアルタイムで管理する

RFIDは、ICタグと電波を利用して商品や荷物の情報を読み取る技術です。

バーコードでは基本的に一つずつ読み取る必要がありますが、RFIDでは条件によって複数のタグをまとめて読み取れるため、棚卸しや入出荷確認などの効率化に活用できます。

また、IoTセンサーを組み合わせることで、位置だけでなく温度や湿度、振動などの情報を収集することも可能です。

物流ITは「商品が何個あるか」を管理するだけではなく、「どこにあるか」「どのような状態にあるか」までデータ化する方向へ進んでいます。

AI需要予測|販売データから必要な在庫量や発注量を予測する

AI需要予測は、過去の販売実績や季節、曜日、キャンペーンなどのデータをもとに、将来どの程度商品が売れるかを予測する技術です。

物流では、予測した需要を在庫補充や発注計画、人員配置などに活用できます。

在庫を多く持てば欠品を防ぎやすくなりますが、売れ残れば保管費や廃棄リスクが増えます。反対に在庫を減らしすぎれば販売機会を失う可能性があります。

AI需要予測を活用することで、欠品を抑えながら過剰在庫も減らす「適正在庫」を目指しやすくなります。

ただし、AIを導入すれば自動的に正確な予測ができるわけではなく、商品・在庫・販売実績などのデータ整備も重要です。

BI・物流データ分析ツール|物流KPIを可視化して改善につなげる

BIツールなどを使えば、WMSやOMS、TMSなどに蓄積されたデータをグラフやダッシュボードとして可視化できます。

物流では、在庫回転率、誤出荷率、作業時間、配送費、出荷件数など、さまざまなKPIを管理できます。

物流システムを導入しても、データを保存しているだけでは改善にはつながりません。

「商品別のピッキング時間」「時間帯別の出荷件数」「配送先別の物流コスト」などを可視化すれば、どこに非効率があるかを数字から発見しやすくなります。

物流でITを活用して効率化できる業務

物流ITは、倉庫内の在庫管理だけに使われるものではありません。ECサイトで注文を受けた瞬間から、入荷・保管・ピッキング・検品・出荷・配送、さらには返品対応や物流分析まで、物流に関わる幅広い業務を効率化できます。

特に効果が出やすいのは、「同じ作業を何度も繰り返す業務」「大量の情報を扱う業務」「人の確認ミスが起こりやすい業務」です。

ここからは、物流ITを使うことで具体的にどの業務をどのように効率化できるのか、受注から物流分析まで工程ごとに解説していきます。

受注管理|複数のECモール・カートから入る注文を自動でまとめる

楽天市場やAmazon、自社ECサイトなど複数の販売チャネルを運営している場合、それぞれの管理画面で注文を確認していると受注件数の増加に比例して作業量も増えていきます。

OMSなどの物流ITを活用すれば、複数チャネルの注文を一つの管理画面に集約し、受注確認、在庫引当、出荷指示などを効率化できます。

特に注文数が多い企業では、通常注文は自動処理し、確認が必要な注文だけを担当者へ回す仕組みにすることで大幅な業務削減につながります。

複数チャネルの注文情報を一つの画面にまとめる

ECモールや自社サイトごとに注文を確認する必要がなくなり、注文情報をまとめて処理できます。

複数店舗を展開している企業ほど、管理画面を切り替える時間やCSVをまとめる作業を削減でき、受注漏れの防止にもつながります。

条件に合う注文は自動で受注処理を進める

支払い確認済み、住所不備なし、在庫ありなど一定条件を満たした注文を自動処理することで、担当者が一件ずつ確認する必要を減らせます。

例外注文だけを人が確認する運用にすると、受注件数が増えても作業負担が膨らみにくくなります。

受注情報をそのまま倉庫の出荷指示につなげる

OMSとWMSを連携すれば、受注担当者が注文情報を加工して倉庫へ送る作業を減らせます。

注文確定後に出荷指示データを自動連携することで、転記ミスを防ぎながら受注から出荷までのリードタイムを短縮できます。

入荷管理|入荷予定と実績を照合して検品作業を効率化する

入荷管理では、「何の商品が何個入ってくる予定なのか」という入荷予定と、実際に倉庫へ届いた商品を正しく照合する必要があります。

紙の納品書と商品を目視で照合していると、SKU数や入荷量が増えた際に確認漏れが発生しやすくなります。

WMSなどを活用すれば、事前に登録された入荷予定データと、ハンディターミナルなどで読み取った実績を照合できます。

入荷時点で数量差異や商品違いを発見できれば、誤った在庫情報が後工程まで引き継がれることを防げます。

入荷予定データを事前に倉庫へ共有する

入荷予定の商品、数量、納品日などを事前にシステムへ登録しておけば、倉庫側も当日の物量を把握できます。

必要な作業スペースや人員をあらかじめ準備できるため、トラックが到着してから対応方法を考える状態を減らせます。

バーコード照合で商品・数量の入荷ミスを防ぐ

入荷した商品をバーコードなどで読み取り、予定データと照合することで、異なる商品や数量不足をその場で発見できます。

担当者が商品コードを目視で確認する作業を減らせるため、入荷量が多い倉庫ほど効果が期待できます。

入荷完了と同時に在庫データへ反映する

入荷検品が完了した商品をそのまま在庫情報へ反映できれば、Excelなどへ再入力する必要がありません。

販売可能な在庫を早くEC側へ反映できるため、商品が倉庫にあるのに販売できない時間の短縮にもつながります。

在庫管理|複数倉庫・店舗・ECの在庫情報を一元管理する

倉庫や店舗、ECサイトなど複数の拠点・販売チャネルを運営している場合、それぞれで在庫を管理すると「店舗には在庫があるのにECでは欠品している」といった状況が発生しやすくなります。

WMSや在庫管理システムを活用し、拠点ごとの在庫数や入出庫情報を一元管理すれば、どこに何個の商品があるのかを把握しやすくなります。

また、在庫推移を蓄積することで、売れない商品を長期間保管している状況や、欠品しやすい商品も発見できます。

倉庫・店舗ごとの在庫数をリアルタイムで把握する

複数拠点の在庫を同じシステムで管理すれば、担当者が各倉庫へ問い合わせなくても在庫状況を確認できます。

在庫の偏りも見つけやすくなり、欠品拠点へ別拠点から在庫を移動する判断も行いやすくなります。

EC上の在庫数と実在庫のずれを減らす

注文や出荷に合わせて在庫情報を更新することで、「ECでは販売できたのに実際には在庫がない」という売り越しを防ぎやすくなります。

複数モールで同じ商品を販売している場合は、チャネル間で在庫を連動させることも重要です。

在庫回転率から滞留在庫を見つける

在庫量と販売実績を分析すれば、長期間動いていない商品や過剰に仕入れている商品を可視化できます。

保管スペースを圧迫している在庫を早期に発見し、セールや仕入れ停止などの対策につなげることで、保管コストや在庫リスクの削減につながります。

ピッキング|商品の保管場所と最短ルートを表示して移動時間を減らす

倉庫作業の中でも、商品の保管棚まで歩いて商品を集めるピッキングは多くの時間を占める工程です。

特に商品数が多い倉庫では、作業者が商品の場所を探す時間や倉庫内を往復する時間が生産性低下につながります。

WMSを活用すれば、注文内容に応じてピッキング対象の商品と保管ロケーションを作業者へ表示できます。

経験者が商品の場所を覚えていることに依存せず、新人でも作業しやすい環境を構築できます。

商品の保管場所を端末へ表示する

「棚A-03-02」のようにロケーションを管理し、ピッキングする商品の場所をハンディ端末などへ表示します。

作業者が商品を探し回る時間を減らせるため、SKU数が多い倉庫ほど効果が出やすくなります。

ピッキングする順番を最適化して歩行距離を減らす

注文リストの順番ではなく、商品の保管場所を考慮した順番でピッキングを行えば、倉庫内を何度も往復する必要がなくなります。

作業時間の短縮だけでなく、スタッフの身体的負担軽減にもつながります。

作業者別の処理件数を計測して改善につなげる

誰が何件ピッキングし、どの作業に何分かかったかをデータ化すれば、生産性のばらつきを確認できます。

スタッフを評価するためだけでなく、時間がかかる棚や商品を特定し、レイアウト改善へつなげることが重要です。

検品・梱包|バーコードやRFIDを使って誤出荷を防止する

検品・梱包工程では、正しい商品を正しい数量で梱包し、正しい購入者へ発送することが求められます。

目視だけで確認していると、商品デザインが似ているSKUやサイズ違い、カラー違いなどで誤出荷が発生する可能性があります。

バーコードやRFIDとWMSを活用すれば、注文データと実際の商品をシステム上で照合できます。

また、商品ごとの梱包方法や同梱物などを画面へ表示することで、梱包担当者の経験に頼らない作業環境を構築できます。

バーコード照合で商品違い・数量違いを防止する

注文情報に登録された商品コードと実際の商品バーコードを照合し、一致した場合のみ作業を進める仕組みにします。

サイズやカラー違いなど、人の目では間違えやすい商品でもシステムによるチェックが可能になります。

注文ごとの梱包ルールを画面へ表示する

ギフト包装、緩衝材、同梱チラシなど注文や商品によって梱包方法が異なる場合、必要な作業内容を画面に表示できます。

作業者が別のマニュアルを確認する時間を減らし、同梱漏れや梱包方法の間違いを防止できます。

梱包完了を記録して問い合わせにも対応しやすくする

いつ、誰が、どの注文を検品・梱包したか記録しておけば、出荷後に問い合わせが発生した際も作業履歴を確認できます。

問題発生時の原因分析や再発防止にも活用できる重要なデータになります。

出荷管理|注文情報から送り状や出荷指示を自動作成する

出荷管理では、受注情報をもとに倉庫へ出荷指示を出し、配送会社の送り状を作成し、発送完了後に追跡番号をEC側へ反映するなど多くの事務作業が発生します。

これらを人が複数のシステムへ入力していると、出荷件数に比例して作業時間が増えていきます。

OMS・WMS・配送システムなどを連携させれば、注文から出荷、発送完了までのデータ処理を一連の流れとして効率化できます。

受注確定後に倉庫へ出荷指示を自動連携する

注文情報をCSVなどへ手作業で加工して倉庫へ送るのではなく、システム間で出荷指示を連携します。

受注から倉庫作業開始までの時間短縮と転記ミス防止の両方につながります。

送り状データを注文情報から自動作成する

配送先の氏名、住所、電話番号などを注文情報から送り状システムへ連携すれば、一件ずつ入力する必要がありません。

出荷件数が多いほど入力作業を削減でき、住所や氏名の転記ミス防止にも効果が期待できます。

追跡番号や発送完了情報をEC側へ自動反映する

商品を発送した後、配送会社の追跡番号などをECサイトへ連携すれば、担当者が注文ごとに発送完了処理を行う必要を減らせます。

発送通知を早く送れるようになり、購入者も配送状況をすぐ確認できるようになります。

配車・配送|荷量・車両・配送先から効率的な配送ルートを作成する

自社配送を行っている企業では、毎日の注文内容に応じて「どの車両にどの荷物を積み、どの順番で配送するか」を決める必要があります。

配送先が増えるほど組み合わせは複雑になり、ベテランの配車担当者でなければ計画を立てられないケースもあります。

配送管理やルート最適化のITを活用すれば、配送先、時間指定、荷量、車両などの条件をもとに配送計画の作成を支援できます。

配車担当者個人の経験を、会社として再現できる仕組みに変えられる点も大きなメリットです。

複数の配送条件から配車計画を作成する

配送先だけではなく、荷物量、車両の積載量、指定時間など複数の条件を考慮して配車を検討できます。

担当者が地図と注文表を見ながら一から組み立てる作業を減らし、配車計画作成に必要な時間を短縮できます。

配送ルートを最適化して走行距離・時間を抑える

配送先を効率的な順番で回れるよう計画することで、無駄な移動や戻りを減らせます。

配送時間だけでなく、燃料費や車両稼働時間などのコスト削減につながる可能性があります。

計画と実績の差を分析して次回の配送へ反映する

予定した到着時刻と実績を比較すれば、渋滞しやすいエリアや荷卸しに時間がかかる配送先などを発見できます。

担当者の頭の中だけに経験を残すのではなく、データとして蓄積し次回の配送計画へ反映できます。

返品管理|返品商品の受付から再販・廃棄までの状況を追跡する

EC物流では、出荷する商品だけでなく返品された商品の管理も重要です。

返品商品は、倉庫に戻しただけでは在庫として再販売できるとは限りません。未開封なのか、破損しているのか、不良品なのかなど状態を確認し、「再販」「修理」「メーカー返品」「廃棄」といった処理を判断する必要があります。

返品管理をシステム化すれば、どの注文の商品がいつ返品され、現在どの処理段階にあるか追跡できます。

返品受付と元の注文情報を紐づける

返品商品と元の注文を紐づければ、購入者、商品、返品理由などを確認しやすくなります。

「倉庫へ商品だけ戻ってきて、何の返品かわからない」状態を防止し、カスタマーサポートとも情報共有しやすくなります。

商品の状態によって再販・修理・廃棄を管理する

返品された商品を検品し、状態ごとに処理ステータスを設定します。

再販可能な商品と不良品を明確に分けることで、不良品を誤って通常在庫へ戻してしまうリスクも減らせます。

返品理由を分析して商品・物流改善につなげる

返品理由をデータとして蓄積すれば、「破損が多い商品」「サイズ違いが多い商品」などの傾向を把握できます。

梱包方法や商品ページ、品質管理まで改善することで、返品そのものを減らすことにもつながります。

物流分析|「1注文あたり何分・何円かかっているか」を可視化する

物流ITの価値は、日々の作業を効率化することだけではありません。

受注、在庫、作業時間、出荷、配送などのデータを蓄積することで、「物流にどの程度の時間とコストがかかっているか」を分析できます。

たとえば総物流費だけを見るのではなく、1注文あたり物流コストや1件あたりピッキング時間などに分解することで、売上が増えた際に物流効率も改善しているのか判断できます。

工程ごとの作業時間を計測してボトルネックを探す

入荷、ピッキング、検品、梱包など工程別に時間を計測すれば、「物流全体のどこに時間がかかっているか」を把握できます。

改善対象を感覚で決めず、最も時間を使っている工程から優先して見直せます。

1注文あたりの物流コストを算出する

人件費、倉庫費、梱包資材費、配送費などを出荷件数で割ることで、1注文を届けるために必要な物流コストを把握できます。

売上だけでなく物流原価まで見ることで、本当に利益の出ている商品や販売方法を判断しやすくなります。

商品・チャネル別に物流効率を比較する

商品サイズや販売チャネルによって必要な梱包作業や配送費は異なります。

商品別・チャネル別に物流コストを比較すれば、「売上は高いが物流コストも高い商品」などを発見でき、価格や配送条件を見直す材料になります。

物流にITを活用した企業の導入・改善事例

物流ITの仕組みを理解しても、「実際に導入すると現場がどのように変わるのか」をイメージしにくい方もいるでしょう。

物流ITによる改善方法は企業の課題によってさまざまです。紙で行っていたピッキングをWMSに切り替える企業もあれば、OMSとWMSを連携して受注から出荷までを自動化したり、AIや物流ロボットを活用して在庫や倉庫作業そのものを最適化したりするケースもあります。

ここでは、物流ITをどのような課題に活用できるのかをイメージしやすい代表的な改善パターンを紹介します。

WMS導入で紙のピッキングリストからハンディ端末による作業へ切り替えた事例

物流ITの代表的な改善例として、紙のピッキングリストを使った倉庫作業から、WMSとハンディターミナルを活用した運用への切り替えがあります。

紙の場合、作業者自身が商品棚を探し、商品コードや数量を目視で確認する必要があるため、担当者の経験によって作業スピードや精度に差が生じやすくなります。

WMS導入後は、端末に商品と保管ロケーションを表示し、商品をバーコードで照合しながら作業できます。

その結果、商品の探索時間や目視確認を減らし、商品違い・数量違いも出荷前に発見しやすくなります。

商品の場所を覚えていない新人でも作業しやすくなるため、教育期間の短縮や属人化の解消にもつながります。

OMSとWMSを連携して受注から出荷指示までを自動化したEC企業の事例

複数のECモールや自社サイトを運営する企業では、注文データを各サイトから取得し、内容を確認したうえで倉庫向けの出荷データを作成する作業が発生します。

注文数が増えるほど事務作業が増え、CSV加工やデータ転記のミスも起こりやすくなります。

そこでOMSとWMSを連携し、受注した注文を一定条件で自動処理した後、そのまま倉庫へ出荷指示を送る仕組みへ変更する方法があります。

倉庫で出荷が完了すると、出荷実績や追跡番号をOMSへ戻し、EC側の発送完了処理へつなげることも可能です。

システム間の橋渡しを人ではなくデータに任せることで、注文数が増えてもバックオフィス業務が増えにくい物流体制を構築できます。

AI需要予測を活用して欠品と過剰在庫を同時に減らした事例

在庫管理では、欠品を避けるために在庫を多めに持つと過剰在庫が発生し、在庫を減らしすぎると販売機会を失うというジレンマがあります。

特にSKU数の多い企業では、担当者がすべての商品について適正在庫を判断することは容易ではありません。

そこで、販売実績や季節性、キャンペーンなどのデータをもとにAIで需要を予測し、商品ごとの発注量や在庫量を調整する活用方法があります。

売れ行きの高い商品は欠品前に補充し、動きの鈍い商品は発注を抑えることで、欠品と過剰在庫の双方を減らすことを目指せます。

配送ルート最適化システムによって配車担当者の経験依存を減らした事例

配送業務では、交通事情、荷物量、車両、配送時間指定など多くの条件を考慮して配車を組む必要があります。

そのため、長年業務を担当しているベテランしか効率的な配送計画を作れず、担当者が休むと配車品質が下がるという企業もあります。

こうした課題に対し、配送先や時間指定、車両情報などをシステムへ入力し、配送ルート作成を支援する物流ITを活用する方法があります。

配車ノウハウを個人の経験ではなく、企業のデータとして蓄積できる点も大きなメリットです。

物流ロボットを導入して「人が商品を探す倉庫」から「商品が人のもとへ来る倉庫」に変えた事例

従来型の倉庫では、ピッキング担当者が広い倉庫内を歩き回り、棚から商品を集める方式が一般的です。

しかし、倉庫が大規模になるほど歩行距離が長くなり、作業時間の多くを移動が占める場合があります。

そこで、自動搬送ロボットや棚搬送システムを導入し、商品や棚を作業ステーションまで運ぶ「Goods to Person」の考え方を取り入れる物流現場もあります。

作業者が商品を探しに行くのではなく、商品が作業者のところへ来る仕組みにすることで、歩行時間を大幅に削減できます。

ただし設備投資が大きくなるため、十分な物量があるか、投資を回収できるかを事前に検証することが重要です。

物流データを分析して作業効率ではなく「1注文あたり物流コスト」を改善した事例

物流改善では、「ピッキングが早くなった」「出荷件数が増えた」といった作業効率だけを評価しがちです。

しかし、物流の最終的な目的は、必要な品質を維持しながら商品を適切なコストで顧客へ届けることです。

そこで、WMSやOMSなどのデータに人件費、梱包資材費、配送費などを組み合わせ、「1注文あたりの物流コスト」をKPIとして管理する方法があります。

たとえばピッキング時間が短縮されても梱包資材費や配送費が増えていれば、物流全体では改善していない可能性があります。

工程単体ではなく、注文から配送までの総コストを見ることで「利益につながる物流改善」かどうかを判断できます。

自社に合った物流ITシステムの選び方

物流ITにはさまざまな種類があり、同じWMSやOMSでも対応できる業務や機能、料金体系は異なります。そのため、有名なシステムや機能数の多いシステムを選べばよいとは限りません。

自社に合った物流ITを選ぶには、まず現在の物流業務のどこに時間やコストがかかっているのかを整理し、その課題を解決できるシステムかどうかを確認する必要があります。

さらに、現在だけでなく将来の物流量、既存システムとの連携、例外処理、現場スタッフの使いやすさまで含めて比較することが重要です。ここからは物流IT選定時に確認したいポイントを解説します。

まず「どの物流業務に最も時間とコストがかかっているか」を調べる

物流ITを選ぶ前に、まず現在の物流業務を工程ごとに分解することが重要です。

「倉庫作業が大変だからWMSを導入する」と考えるのではなく、入荷、棚入れ、在庫確認、ピッキング、検品、梱包、出荷など、それぞれに何時間かかっているかを確認しましょう。

たとえば、物流担当者が最も時間を使っている業務が受注データの加工であれば、WMSよりOMSとの連携を改善した方が効果が大きい可能性があります。

物流ITは機能の多さではなく、自社のボトルネックを解消できるかで選ぶことが重要です。

現在の物流量ではなく3年後の出荷件数まで想定して選ぶ

物流ITは、現在の出荷件数だけを基準に選ぶと、事業成長にシステムが追いつかなくなる可能性があります。

EC事業では、販売チャネルの追加や商品数の増加によって、数年で受注件数が大きく変わるケースもあります。

そのため、「現在1日100件だから100件処理できればよい」ではなく、今後どの程度まで出荷件数やSKU数が増える可能性があるかも考えておきましょう。

料金体系が出荷件数によってどう変わるのか、倉庫を増やした場合に対応できるのか、複数拠点を一元管理できるのかなども重要です。

WMS単体ではなくEC・OMS・基幹システムとの連携可否を確認する

物流ITを選ぶ際は、そのシステム単体の機能だけを見るのではなく、前後のシステムとどのようにつながるかを確認しましょう。

たとえばWMSが高機能でも、OMSから出荷指示を自動取得できなければ、毎日CSVを加工してアップロードする業務が残る可能性があります。

また、商品マスタや在庫情報を複数システムで個別管理すると、商品コードや在庫数の不一致が発生しやすくなります。

「連携できるか」だけでなく、「どのデータが・どちら向きに・いつ連携されるのか」まで確認しましょう。

通常業務だけでなく返品・同梱・ギフトなどの例外処理まで確認する

物流ITのデモでは、一般的な「注文→ピッキング→検品→出荷」の流れが紹介されることが多いため、通常注文だけを見ると問題なく利用できるように感じます。

しかし実際の物流現場では、返品、キャンセル、予約商品、同梱、ギフト包装、熨斗、複数個口などさまざまな例外処理が発生します。

システム導入後に「この処理だけ対応できない」と判明すると、その部分だけExcelや紙で管理することになり、運用が複雑になります。

毎日発生する通常業務だけでなく、月に数回発生する特殊処理まで事前にテストすることが重要です。

管理者の機能より実際に作業する人の操作性を重視する

物流ITの選定では、分析レポートや管理画面など管理者向けの機能に目が向きがちです。

しかし、毎日システムを使うのは倉庫スタッフや受注担当者です。

現場スタッフにとって操作が複雑であれば、入力漏れが発生したり、結局紙のメモを併用したりする可能性があります。

画面の文字は見やすいか、必要な操作数は少ないか、新人でも理解できるか、ハンディ端末を持ちながら作業しやすいかなどを確認しましょう。

物流ITでは「多機能であること」より「現場で正しく使い続けられること」が成果を左右します。

機能数ではなく「削減できる作業時間・ミス・物流コスト」で比較する

物流ITを比較するとき、機能数が多いシステムほど優れているように見える場合があります。

しかし、自社で使わない機能がいくら多くても物流改善にはつながりません。

たとえばAシステムは100機能、Bシステムは50機能しかなくても、自社のピッキング時間を30%削減できるのがBシステムなら、Bの方が適している可能性があります。

比較する際は、「月に何時間削減できるか」「年間何件の誤出荷を防げるか」「物流コストを何円削減できるか」に置き換えて考えましょう。

物流ITシステムの導入費用と費用対効果の考え方

物流ITを導入する際、多くの企業が気になるのが「どのくらい費用がかかり、本当に投資した分の効果を得られるのか」という点でしょう。

物流ITの費用には、システムの初期費用や月額料金だけでなく、ハンディターミナルなどの機器、既存システムとの連携、スタッフ教育なども含まれます。そのため、単純に月額料金だけで比較すると、実際の総コストを見誤る可能性があります。

また、導入効果についても人件費削減だけを見るのではなく、誤出荷や欠品の削減、作業時間短縮、物流品質向上などを含めて判断することが重要です。ここでは物流ITの費用と費用対効果の考え方を紹介します。

物流ITの費用は初期費用・月額費用・機器費用・連携費用に分けて考える

物流ITの導入費用を比較する際は、システム料金だけを見るのではなく、必要となる費用を項目ごとに分けて整理しましょう。

クラウド型システムでは初期費用と月額利用料が中心になりますが、倉庫で利用する場合はハンディターミナル、プリンター、ラベル、Wi-Fi環境などが必要になることもあります。

さらに、既存システムとのAPI連携や個別カスタマイズが必要な場合は、追加開発費が発生します。

初年度の料金だけではなく、3年間・5年間でかかる総額で比較すると、システムごとのコスト差を判断しやすくなります。

物流ITの費用対効果は「削減できた人件費」だけで判断しない

物流ITの費用対効果を考える際、「何人削減できるか」だけで判断すると導入効果を過小評価する可能性があります。

物流ITによって得られる効果には、作業時間の削減だけでなく、誤出荷削減、在庫精度向上、出荷リードタイム短縮、教育時間短縮などさまざまなものがあります。

たとえばWMS導入によって新人でも早く作業できるようになれば、採用するたびに必要だった教育コストを削減できます。

「人件費削減」だけでなく、ミス削減・品質向上・教育時間・事業拡大への対応まで含めて効果を判断しましょう。

誤出荷・返品・欠品など「見えにくい物流コスト」も導入効果に含める

物流コストというと、倉庫賃料や配送費、人件費など毎月請求される費用だけを想像しがちです。

しかし実際には、誤出荷した商品の再発送費、返品処理に必要な作業時間、欠品による販売機会損失など、会計上の「物流費」として見えにくいコストも発生しています。

たとえば年間500件の誤出荷があり、1件の対応に送料・商品原価・作業時間を合わせて2,000円かかっている場合、それだけで年間100万円相当の損失になります。

物流ITによって減らせる「隠れたコスト」まで含めて投資効果を計算することが重要です。

1出荷あたり物流コストを算出するとIT投資の効果を比較しやすい

物流IT導入前後の効果を確認する際に活用しやすい指標が「1出荷あたり物流コスト」です。

倉庫人件費、保管費、梱包資材費、配送費、システム費など物流に関わるコストを一定期間の出荷件数で割ることで、一つの注文を発送するために何円かかっているかを把握できます。

売上や出荷件数が伸びている企業では、物流費の総額だけを見るとコストが増えているように見えます。

しかし、出荷件数が2倍になった一方で物流費が1.5倍に抑えられていれば、1出荷あたりの物流効率は改善していると判断できます。

出荷件数が何件になれば投資を回収できるのか損益分岐点を計算する

物流ITを導入するか迷った場合は、「何件出荷すれば導入費用を回収できるか」という損益分岐点を計算すると判断しやすくなります。

たとえばシステム導入によって1件あたりの物流コストを50円削減でき、年間のシステム費用が120万円であれば、単純計算では年間24,000件の出荷が一つの目安になります。

もちろん実際には初期費用や教育費なども考慮する必要がありますが、投資と改善効果を同じ単位で比較することが重要です。

現在は出荷件数が少なく投資回収できなくても、数年後に事業拡大する予定があれば導入価値が高まることもあります。

物流ITを導入すべき業務・しなくてもよい業務の見極め方

物流業務を効率化したいからといって、すべての作業をIT化する必要はありません。IT化にはシステム費用や設定、教育などのコストもかかるため、発生頻度の少ない業務まで自動化すると、かえって投資額の方が大きくなる場合があります。

一方、毎日何百回も繰り返す作業や、ミスした際の損失が大きい業務、特定の担当者しか対応できない業務はIT化による効果を得やすい傾向があります。

物流ITを導入する際は、「IT化できるか」ではなく「IT化することでどれだけ効果を得られるか」を基準に判断することが重要です。ここからは、IT化の優先順位を決める具体的な考え方を解説します。

「件数が多い・繰り返す・ルール化できる」物流業務はIT化しやすい

物流ITを導入する業務を選ぶ際は、「件数が多い」「繰り返し発生する」「一定のルールで処理できる」という3つの条件に注目すると判断しやすくなります。

たとえば、毎日数百件発生する受注データの取り込みや在庫引当、送り状作成などは、処理方法がある程度決まっているためIT化による効果が出やすい業務です。

一方、年に数回しか発生しない特殊対応を自動化しても、削減できる時間は限られています。

一回数十秒の作業でも、毎日何百回も繰り返しているならIT化の優先度は高くなります。

ミスが売上や顧客満足度に直結する物流業務は優先的にIT化する

作業時間がそれほど長くなくても、ミスが発生した際の損失が大きい業務はIT化の優先度を高くするべきです。

代表的なのが検品や在庫管理です。

誤った商品を発送すれば、再発送費や回収費用が発生するだけでなく、購入者からの信頼を失う可能性があります。

また、EC上では在庫ありとなっているのに実際には在庫がない場合、注文キャンセルにつながります。

「ミス1件あたり何円の損失があるのか×年間何件発生しているのか」まで計算すると、IT化の優先度を判断しやすくなります。

担当者しかやり方を知らない物流業務はIT化の優先度が高い

「○○さんがいないと配車を組めない」「商品の保管場所は倉庫長しか把握していない」といった状態は、物流における大きな事業リスクです。

現在問題なく業務が回っていたとしても、その担当者が休職・退職すれば一気に物流が止まる可能性があります。

こうした属人的な業務は、IT化を検討する優先順位が高いといえます。

システムへ判断条件や情報を蓄積し、誰でも確認できる状態にすることで、「個人の経験」を「会社の仕組み」へ変えることができます。

月数回しか発生しない業務は無理にIT化しないほうが効率的な場合もある

物流ITでは、自動化できる業務をすべて自動化すればよいわけではありません。

たとえば月に1~2回しか発生しない特殊注文の処理に対応するため、大きなシステム改修費をかけるのであれば、担当者が手作業で対応した方が総コストを抑えられる可能性があります。

IT化の判断では、「自動化できるか」ではなく「自動化する価値があるか」を考えることが重要です。

少量の例外業務までシステムへ合わせようとすると、システムが複雑になり、日常業務まで使いにくくなる可能性があります。

判断や個別対応が多い物流業務は完全自動化より「人+IT」が向いている

顧客ごとの特別対応や商品状態の判断など、人の判断が必要な業務は完全自動化に向かない場合があります。

こうした業務まで無理にシステムへ置き換えると、複雑な条件設定が必要になり、少し条件が変わるたびに設定変更が発生する可能性があります。

そこで有効なのが、「通常処理はIT、例外判断は人」という役割分担です。

たとえば全注文のうち90%を自動処理し、住所不備やギフト対応など確認が必要な10%だけ担当者へ表示する仕組みにすれば、大部分の作業を効率化しながら柔軟な対応も維持できます。

「作業時間×発生回数×ミスの損失額」でIT化の優先順位を決める

複数の物流課題がある場合、「どこからIT化すればよいかわからない」という企業も多いでしょう。

その際は、各業務について作業時間、発生回数、ミスによる損失を数値化して比較する方法がおすすめです。

たとえば5分かかる作業が1日1回しかない場合と、30秒の作業が1日1,000回ある場合では、後者の方が年間削減できる時間は大きくなる可能性があります。

「現場が大変そう」という感覚ではなく、作業時間・回数・ミスによる損失を数字にするとIT化の優先順位を決めやすくなります。

物流ITを導入するより物流アウトソーシングしたほうが効率的なケースもある

物流課題を解決する方法は、自社で物流ITを導入することだけではありません。

特に出荷量がまだ少ない企業や、繁忙期と閑散期の物量差が大きい企業では、自社倉庫へWMSや物流設備を導入するより、すでに物流ITや設備を持っている物流会社へ業務を委託した方が効率的なケースがあります。

自社物流では、システム費だけでなく倉庫賃料、人員、設備、教育なども自社で負担する必要があります。

一方、物流アウトソーシングであれば、必要な物流機能をサービスとして利用できます。

「物流をどうIT化するか」だけでなく、「物流そのものを自社で持つべきか」まで含めて検討することが重要です。

まとめ

物流のIT化とは、WMSやOMS、TMS、AI、IoT、物流ロボットなどを活用し、受注・入荷・在庫・ピッキング・検品・出荷・配送といった一連の物流業務を効率化・可視化する取り組みです。

人手不足やEC物流の複雑化、物流コストの上昇が進む中、物流ITの重要性はさらに高まっています。

ただし、システムを導入すること自体が目的になってはいけません。

まず自社の物流工程を整理し、「どの作業に時間がかかっているか」「どこでミスやコストが発生しているか」を把握したうえで、改善効果の大きい業務からIT化することが重要です。

物流IT導入だけでなく、物流会社へのアウトソーシングも含め、物流全体のコストと将来の物量から自社に合った方法を選びましょう。