商品・製品の販売を行う企業で行われる業務に「実地棚卸」があります。言葉は聞いたことがあると思います。しかし、実際に何をすればよいのでしょうか。ここでは実地棚卸を実施する理由や注意点、実施の方法を紹介します。また実地棚卸と帳簿棚卸がありますが、この2点の相違点と問題が起きた際の解決方法もご紹介いたします。
実地棚卸とは
実地棚卸の読み方は「じっちたなおろし」と読みます。また、英語では「Physical inventory」となります。「Physical」は「物理的」、「inventory」は「在庫」という意味で直訳すると「物理的な在庫」ということになります。
実地棚卸は実際の商品や製品の在庫を数え、手元にある商品量を算定することを指します。単に「棚卸」というと実地棚卸を指すことがほとんどです。
実地棚卸を行う理由
実地棚卸を行う理由は大きく以下の2点です。
・利益の確認
ここでは、実地棚卸を行う理由についてご紹介いたします。
実地棚卸を行う理由①在庫の確認
実地棚卸は前述したとおり、商品や製品の在庫を実際に確認することです。実際に確認するということで在庫がデータと差異がないか、商品・製品に傷などの品質の問題がないかなどの確認をすることができます。在庫のデータとの差異は入力ミスや、盗難によって引き起こされるものであり、実地棚卸をすることで適切な管理をすることができます。
実地棚卸を行う理由②利益の確認
在庫は「棚卸資産」と呼ばれ、企業の総資産の大部分を占める資産となります。
会計上では商品として販売されない限り費用である「売上原価」として計上されません。実地棚卸を行い、実際に販売された在庫を確定させることで売上を算出することができます。
棚卸資産の原価総額の売上高を区分し正確な利益を計上するために実地棚卸を行う必要があります。
実地棚卸における注意点
実地棚卸についていくつかの注意点があります。ここでは間違いやすい2点を紹介します。
実地棚卸における注意点・時期や義務
・立会
実地棚卸における注意すべきポイント①時期や義務
実地棚卸行う時期は決算前です。3月・6月・9月の決まった時期に行われることが多いです。しかし、明確な時期の指定はありません。そのため利益を確定しなくてはいけない決算前に行われることがほとんどです。
また、注意しなくてはならないことは明確な時期の指定が無いものの、利益を確定させるために必ず行う義務があります。もし行わなかった場合には納税の金額が正当なものでなくなったり、過剰・過小な在庫になってしまうことになり大きな損失を被る場合があります。
実地棚卸における注意すべきポイント②立会
実地棚卸を行う際は、年に一度監査法人が同席し、棚卸の実施方法が正当であるかを確かめてもらう「立会」が必要になります。これは棚卸の実施方法だけでなく、在庫数量の妥当性、在庫の管理や保管方法の適切性を第三者に確認してもらうことになるため非常に重要です。棚卸立会は通常「期末日」に実施されます。
しかし、経営者が年次の棚卸数量を決定しているか、継続的に記録することを実施しているかに関わらず期末日以外にも行われる場合があります。期末日に行われても、期末日以外に行われることとなっても棚卸資産の管理方法の整備や運用状況の有効性に基づいて、監査上適切であるかどうかを判断します。
実地棚卸の方法
実地棚卸には以下の2つの方法があります。
・リスト方式
ここでは2つの方法とメリット、デメリットをご紹介いたします。
実地棚卸の方法①タグ方式
タグ方式とは棚卸資産の現物の品目と数量を確認します。その後に棚札(タグ)を現物に貼り付けることで数量のカウントを行う方法です。タグ方式のメリットは現物を確認してから照合を行うため計上漏れの発生が少ないです。デメリットは現物に貼り付けたタグは連番管理が必要になるため手間がかかります。
実地棚卸の方法②リスト方式
リスト方式とは実際の棚卸資産が在庫管理システムや在庫管理表等のリスト上の数量と一致しているかを確認する方法です。リスト方式のメリットはリスト上の一致を確認するため手間が少ないです。デメリットはリスト上の在庫と一致しているかを確認する方法のため計上漏れが発生する場合があります。
実地棚卸で要領良く仕訳を行う方法
実地棚卸を行うことで正確な利益を算出する事を先述しましたが、実際に売上から売上原価を差し引き利益を算出することを「仕訳」と呼びます。仕訳を行うことで何が増減したかを分類することができます。ここでは実地棚卸で要領良く仕訳を行う方法を紹介します。
実地棚卸で要領良く仕訳を行う方法①
「最終仕入原価法」と呼ばれている方法があります。こちらは仕入れ価格を決算日に最も近い仕入れ価格とみなし計算する方法です。仕入れ価格にばらつきがあったとしても一律な仕入れ価格とみなし計上するため非常に簡単に理解ができます。
しかし、期末直前の価格変動の影響を受けやすく適切に判断ができない場合があるというデメリットが存在します。
実地棚卸で要領良く仕訳を行う方法②
「洗い替え法」と呼ばれる方法です。また洗い替え法は低価法と呼ばれ、先ほどの最終仕入原価法とは違い原価と時価を選択できる柔軟性があります。そして、低価法は在庫の市場価値が帳簿価額を下回った場合に下回った額を評価損として計上できるため、その分だけ利益を少なく計上することができます。これにより節税効果があります。
しかし、こちらの方法の場合、時価の把握が困難、計算が最終仕入原価法より複雑になるといったデメリットが存在します。
実地棚卸と帳簿棚卸の相違点
実地棚卸と帳簿棚卸の相違点は、実地棚卸は実際に在庫を確かめるということに対して、帳簿棚卸は仕入れた商品の数から売れた商品の数を引くことで「あるはず」の商品数を計算するという点です。どちらか一方を行えばいいということではありません。帳簿棚卸の方が把握することは簡単ですが、実際の在庫とのずれが生じてしまう場合があるからです。実地棚卸を行う理由の一つである正確な在庫の把握はこのためにあるため、実地棚卸と帳簿棚卸は併用して扱うべき方法です。
実地棚卸と帳簿棚卸の数量が合わなかった場合
実際に在庫を確かめてみると記録漏れや紛失、破損などの人のエラーや、盗難などによる被害によって帳簿棚卸の個数と実地棚卸の戸数が合わなくなる場合があります。この時には実際に確認している実地棚卸を基に帳簿棚卸の戸数を修正することになります。
しかし、数を合わせるだけでは根本的な解決にならないため「棚卸誤差率」という指標を計算します。計算方法は差異の絶対値を実地棚卸後の数値で割り100を掛けて百分率で表すという単純な計算方法になっています。多くの企業ではこの棚卸誤差率を目標を「0.1%」としているようです。
実地棚卸を学ぶ際に参考になる本
実地棚卸を学ぶ際に参考になる本
実地棚卸を理解を深めるためには「在庫とは何か」という事から実地棚卸だけでなく在庫管理の方法までを一冊にまとめている次の本をご参考になさってください。
誰も教えてくれなかった 実地棚卸の実務Q&A
著者:國村 年, 松井 大輔, 大野 貴史
出版社:中央経済社
まとめ
実地棚卸とは在庫管理のために必要な行為ですが、在庫管理だけでなく利益の計上のためにも必要なことです。手間がかかりますが、商品・製品を取り扱う企業であれば必ず行わなければなりませんので効率的かつ効果的な方法をお試しくださいませ。
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